沖縄の風土・暮らしが源泉となった美しい染物があることをあなたは知っていますか。
~琉球びんがた道具箱とは~
ゼロからわかる。ゼロから拡げる。紅型という染めの世界。
紅型のことがわからなくても大丈夫。紅型の「色を染める」という工程を体験することで、少しずつ紅型の世界を広げていき、紅型という伝統工芸に慣れ親しんで欲しい。より多くの人が紅型に出会うきっかけづくりをしたい。そんな思いで生まれました。
紅型について楽しく学べるおとなのお道具箱になっています。
~琉球びんがたとは~
琉球びんがたとは、沖縄の伝統工芸であり染色技法のひとつ。
早くは13世紀から起源を持つと言われています。
「紅」は色、「型」は模様のことを指し、豊かな自然風土の中で生まれ、独自の染技で育まれてきた沖縄の染物の総称です。紅型は長い歴史の中で、古くは王族や士族をはじめ、今なおその独特な美しさ・華やかさで人々を魅了し続けています。紅型の魅力といえば、鮮明な色彩、大胆な配色であり、沖縄の自然や風土を反映させた文様が特徴的です。
~琉球びんがたの輝き~
型絵染で人間国宝になった鎌倉芳太郎は、琉球びんがたをそう讃えました。
琉球びんがたとは、沖縄の伝統工芸であり京友禅、加賀友禅、江戸小紋と並ぶ、日本の代表的な染物です。模様の美しさや鮮やかな色彩、大胆な配色は琉球王朝時代から現在まで人々を魅了し続けています。
しかしその一方で、「きもの離れ」による産業の衰退化・職人の高齢化・後継者育成・賃金の伸び悩み等の課題もあり、このままいくといつか琉球びんがたの歴史が途絶えてしまうのでは・・と危機感を抱いています。
そこで、今回生み出されたのが「琉球びんがた道具箱」です。
~琉球びんがた道具箱の意義~
琉球びんがたお道具箱では、ただ商品だけをお渡しするのでなく「職人と繋がるびんがた体験」や「継続的にびんがたを学べる環境」を提供します。おうちにいながらも本格的なびんがた体験ができ、気軽に、自分のペースで製作できる環境を設けることで、紅型がもっと身近な存在になればと思います。この体験を通して紅型の歴史や技法を改めて学んでいただきたいという想い。そして、紅型という共通の趣味をもった人々と紅型業界とのコミュニティを広げ、びんがた好きの方々と一緒に沖縄の伝統工芸、紅型を継承していきたいと思っています。
~琉球びんがた道具箱のこだわり~
今回、琉球びんがた道具箱を製作するにあたり、従来のびんがた体験キットではなく、より本格志向の道具をセレクトし、体験工房に行かずとも普段職人が使っている道具を取り揃えました。
【梅皿】工房では顔料の色味を確認しやすくする為、白い陶器を使用しています。道具箱でもそれを取り入れ実際に使うことができます。
【刷毛】職人が使用している筆を取り寄せています。
【風呂敷】風呂敷の生地はシャンタン生地を採用。びんがたの小物商品にもよく使用されていて、生地に張りがあり、軽く、風呂敷としての生地に最適なものをセレクト。
【道具箱】高級感あるデザインと紙材を取り入れ、大切に使い続けてもらえるような箱をつくりました。
~琉球びんがたの現状と課題~
伝統工芸が年々衰退している中、紅型も未来への伝承が難しい現状にあります。
琉球王朝時代、紅型職人は王朝に仕え王族や士族の衣装として、紅型が染められていましたが、解体後を機に衰退していきました。第二次世界大戦後、壊滅的な打撃を受けるが材料不足の中、王朝時代から紅型三宗家として続く工房の城間栄喜と知念績弘によって紅型が復興していき、現在は王朝時代の伝統を継承し呉服を製作する傍ら、お土産などの観光コンテンツが主な市場となっています。お土産品を主力としてきた作家は、コロナ渦で観光産業が衰退したことで制作活動が困難になっている状況になっています。
こうした取組を先例に、紅型業界を担うこの世代が新しい道を切り開く必要があります。
紅型の課題として、そもそも「本来の紅型」を知らないという人も多いでしょう。市販で売っているかりゆしや、企業やショップが制作したオリジナル「紅型風デザイン」が世の中に浸透し、本来の紅型とは何か。判別がつかない方もいるのではないでしょうか。
紅型は古くからの歴史を持ち、高度な技術や”古典柄”という代々受け継がれてきた伝統が存在します。
まずは、その紅型の基礎的な知識を認識し、実際に紅型の商品を手に取る。体験する。ということから始めていただきたいです。そうすると少しずつ紅型の良さや違いに気づいていただけると思います。
~プロジェクトメンバーの紹介~
◆知念紅型研究所
今回、この体験でレクチャーしていただく工房は、かつての琉球王国士族の仕えた紅型三宗家のひとつである知念研究所。工房の当主である知念冬馬は、知念家十代目職人として、伝統的技術を継承し工房を引き継いでいます。「いい作品はいつできるかわからない。作品への評価は十人十色。それを作り出すために日々勉強だ。」その教えを代々受け継ぎ、現在、若手職人の育成をするとともに、国内のみならず海外などにも琉球びんがたの普及、発展に勤しんでいます。
-知念冬馬よりコメント-
紅型を始め、工芸や手仕事がいつのまにか遠い存在になってしまった現代。 琉球時代でも着用は王族や貴族のみだったかもしれませんが、「作る」という仕事自体はもっと身近にあったはずです。 なぜ手仕事なのか、どう向き合ってきたのか、その片鱗でもこの道具箱から楽しみながら感じてもらえたら幸せです。
◆上江田美希(知念紅型研究所)
知念紅型研究所の職人。風呂敷のデザインも担当してくださり、自身の型彫りの技を活かし、古典柄をアレンジして制作してくださいました。
-上江田美希よりコメント-
今回の風呂敷を作るにあたり、古典柄を選んだ理由は紅型の技法のみならず、歴史にも触れてほしいと思ったからです。沖縄には大きな山はありませんが、今回の柄ではメインのモチーフになっています。このように身近ではない風景も柔軟に取り入れつつ、大胆な色使いで力強く表現していくという昔の職人達の辿った過程を想像しながら体験していただきたいです。 モノを作るという体験だけではなく、沖縄について考えたり感じる時間をみなさんと一緒に共有できることをとても楽しみにしております。
◆アイデア にんべん
体験キットのパッケージデザインを手掛けた、アイデア にんべんの黒川真也と黒川祐子。
アイデアにんべんは、広告の企画や制作、雑誌や書籍の取材執筆、編集などをご夫婦で行っています。今回、この体験キット製作への想いに賛同してくださり、製作プロジェクトの重要な役割を担ってもらいました。キットのアートワーク全般は勿論のこと、コンセプト設計、リーフレットの内容など、利用者目線の丁寧なお仕事をして頂きました。「手に取るだけでワクワクする。」「大切に使い続けたい。」そう思っていただけるような商品デザインになっています。
-アイデア にんべんよりコメント-
紅型の“本格的な体験”以上のもの。古今の紅型職人たちの想いが詰まっていることを伝えたくて、“道具箱”と“指南帖”というかたちに表現しました。
◆琉球びんがた普及伝承コンソーシアム
本プロジェクトの運営を担当する琉球びんがた普及伝承コンソーシアム。琉球びんがた事業協同組合、琉球びんがた職人、民間企業との連携を主軸に置いた組織です。先人たちによる数々の作品、現在の職人たちの技術、そのほか多くの有形無形の文化を未来につなげ、産業として活性化させることを目的としています。
2020年では、「やふそ紅型工房」や「知念紅型研究所」の紅型のデザインを活用し、JTA機内で使用するヘッドレストカバーのプロデュースや、「najimu」というライフスタイルブランドを立ち上げ、タンブラーやランチョンマットの販売なども行っています。
~アンケート調査の実施~
今回、体験イベントを開催するにあたり、県内外出身の方々を対象に、びんがたに関してのアンケート調査を実施しました。
調査結果を振り返ると、県内出身の方々は紅型の存在は知っているが高級品・古風というイメージが強く、「紅型は遠い存在」であること。県外出身の方々は、沖縄に来るまで知らなかったという割合が多く、沖縄の伝統工芸であるやちむんや、お土産で定番の琉球硝子よりも認知度が低い状況です。
紅型は、着物や帯などの呉服の生地を染めることが一般的でしたが、やちむんや琉球硝子などの生活に馴染みやすい小物の需要が高まっています。そこで、琉球びんがた道具箱では、紅型に触れる第一歩として、短時間で染めることができる、且つ使い勝手の良いものをものを採用することになりました。
どんな紅型の作品をつくりたいか」アンケート調査を実施したところ、一番多かったのが『風呂敷』。
風呂敷であれば、用途に合わせて自由自裁にカタチを変えることができるので、とても便利ですよね。例えば、ブックカバーやマスク入れとして活用することができます。